メトロノーム

 楽器奏者にとって必需品のひとつ「メトロノーム」。自分自身の練習時にはもちろん、レッスンでも大活躍です。近年では、振り子式のみならず、様々なタイプのメトロノームが存在し、機能も満載。用途に応じて、使い分けることができます。今や、スマートフォンを持ってさえいれば、無料アプリをインストールし、スマートフォンと共にメトロノームを携帯することもできます。なんとも便利な世の中です。先日、メトロノームの調子が悪くなったので、自宅用に、新しい振り子式のメトロノームを購入しました。 


 音楽家でメトロノームを最初に利用したのは、ベートーヴェンだそうです。そういえば、学生の頃、ドイツ・ボンからのベートーヴェンハウスの方の特別講座を聴講した際に、ピアノソナタでは唯一、作品106にメトロノームのテンポ指示を書き込んだと話されていた記憶があります。楽譜を開いてみたら、講座をしっかり聴講していたであろう、鉛筆による書き込みが… 

 実用的なメトロノームがつくられたのは1815年。今のメトロノームが生まれる100年以上も前に、その原型は発明されていましたが実用化されなかったものを、のちに宮廷機械技師となった、ウィーンのヨハン・ネポムク・メルツェルという人物が、その原型をもとに改良、特許を取得し、翌1816年より発売されたそうです。

 時代と共にどんどん形式が自由になっていく中で、脈拍の速さを基準とし、アダージョ、アレグロ等の速度記号によって若干のテンポ調整をしていた、従来の速度表記を続けることに不合理を感じていたベートーヴェンは、メトロノームを歓迎し、賞賛しています。

 それまでの作曲家たちが、教会や王侯貴族のニーズに合わせて音楽を書き上げていたのに対し、自分の意志で作曲し、広く民衆に向けて芸術作品としての価値を高め、音楽の新しい時代を拓いていったベートーヴェンにとって、的確に理想のテンポを伝えることができるメトロノームの存在は、愛すべきものであったのでしょう。今も、メトロノームの形をした墓石の下で眠っていることが、そう語っているように思えてなりません。 

裕子ピアノ教室フロイデ/豊橋市のピアノ教室

ピアニスト幸田裕子が主宰する、愛知県豊橋市にあるピアノ教室です。 ドイツで研鑽を積んだプロによる、本格的なレッスンをご体験いただけます。 ”上手になりたい方”なら、どなたでも大歓迎♪ピアノを通して豊かな感性を育み、音楽を奏でる喜びを味わってみませんか?