変わらないもの、変わってゆくもの
秋になると、どこからともなく漂ってくる甘い優しい香り。オレンジ色の温かみのある花を咲かせる秋の樹木、金木犀の花びらは、先週金曜日の雨で散ってしまいました。昔から同じ香りであるはずなのに、幼い頃の私は、祖母の家の庭先に咲いていた金木犀の香りが苦手で、いつも門扉から玄関の扉まで、息を止めて走っていたものでした。素敵な秋の香りと感じるようになったのは、いつの頃からでしょうか…
そんな金木犀の花言葉はいくつかありますが、そのひとつに「変わらない魅力」という花言葉があるようです。
クラシック音楽が、何世紀もの時を越えて今でも奏で続けられていることもまた、変わらない魅力があるからなのでしょう。当時の最先端の音楽が、こんなにも長い年月演奏し継がれるとは、作曲家たちは想像すらしていなかったかもしれません。
先日、プライベートコンサートの依頼を受け、チャイコフスキーやラフマニノフの作品と共に、ベートーヴェンやショパン、リストの小品を演奏してきました。選曲したベートーヴェン・ショパン・リストの小品はいずれも、名曲アルバムに載っている作品で、小中学生の頃に弾いた曲です。さらい直している間、初めて演奏した頃には感じられなかった感覚が芽生え、随分と自分の演奏が変わったように思いました。改めて時代背景やエピソードに触れ、たまたまどの曲も、今の私と変わらない年齢で作曲されたと気づき、きっと今の演奏が、より、作曲家のメッセージに近いのだろうと感じています。
人の感性は、年齢とともに変わってゆくものです。何度も演奏している曲であっても、過去に演奏した曲であっても、新しく挑戦する曲であっても、常に感覚を研ぎ澄まして、その瞬間の感性を大切にした演奏をしていきたいと思います。
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